【2024年版】東北大理系数学 傾向と対策 攻略のための勉強法

東北大の理系数学において

「どんな問題が出題されるのだろうか」
「自分が解けるレベルまで到達できるのだろうか」
など、漠然と不安に思っている人は多いのではないでしょうか。

そこで今回は、東北大の理系数学でどんな問題が出題されるのか、東北大の理系数学を攻略するにあたっての対策や勉強法ついてお話しをしていきます。これから受験勉強を始めようという人向けの内容にもなっています。

目次

東北大学理系数学の出題範囲・形式について

出題範囲(前期日程)
経済学部(理系), 理学部, 医学部医学科, 医学部保健学科放射線技術科学専攻・検査技術科学専攻, 歯学部, 薬学部, 工学部, 農学部

・ 「数学Ⅰ」「数学A」
・「数学Ⅱ」「数学B(数列)」
・「数学Ⅲ」「数学C(ベクトル,平面上の曲線と複素数平面)」
試験時間 150分

問題数

大問6題
各大問は小問2~5つで構成
※これまで一部の年度では、小問分割されてないものも出題
出題形式

全問記述式

 頻出分野

分野は満遍なく出題されています

東北大学HPに内に記載されている情報を参照しています。2024年6月13日時点の情報です。

どんなレベルの問題が出題されるのか?

近年の東北大の理系数学入試においては、教科書の例題に基礎におきつつも、そこから発展・融合したような問題が出題されています。難易度が標準のものが3, 4題ほど出題され、やや難から難問に分類されるような難易度の大問が1, 2題出題されます。

2024年は難化して、やや難から難問に分類される難易度の大問が3題でしたが、これだと差が付かなかったのではないかと予想されるため、この傾向が続くとは思えません。また、問題文が長文化しており、そういった大問には基本問題の小問が前半部に配置されています。今後は気にしておくべき傾向かもしれません。

 

今後は気にしておくべき傾向かもしれません。

標準難易度の出題に関しては、下の2024年の大問2が参考となるでしょう。

小問(1)の不等式については数学Ⅱで学びますが、問い方が教科書のものと随分異なります。

また、小問(2)まで読んでみると、整数分野・数学的帰納法の内容とも合わせた出題となっていることに気付きます。この小問(2)については別の項目で取り上げます。青チャートの「基本例題」より難易度は少し高く、内容としてはやや発展的で複数の分野が融合した出題がなされます。

ところで、東北大のような難関大学において、標準難易度の問題が大問6題中に3, 4題も出されてきたことは不思議に思えます。その出題の背景には、次に説明する東北大発表の文書中に長い間記載され続けてきた「基本の理解」を問おうとする姿勢が窺えます。

何が問われてるのか?

東北大発表の文書から読み取れること

東北大学は文書「東北大学一般選抜個別学力試験 出題意図」(今年度分は東北大HPに掲載期間6月から10月で発表されていました)を20年間ほど発表してきました。

大問ごとの出題意図、採点講評、全般的な注意がなされています。令和6年度の内容を抜粋すると、「基本の理解」「分析力・発想力」「明解な答案作成」が東北大側から求められていることが分かります。

実は昨年度までは「計算の力」という文言が入っており、計算量の多い問題も出題されていたのですが、2024年は目立って計算量の多い問題は出題されていません。今後は「分析力・発想力」を問うような出題がなされるということが予想できます。

基本の理解

この「基本の理解」という語については文書中で、

単に公式やその適用方法を記憶するだけではなく、公式が成り立つ理由を理解すること。
数学の記述式問題に対する答案を作成する際には、既知の公式の適用可能性を検討し、公式が適用可能ならば適切に使用し...

と付け加えられております。

この「基本の理解」という語は、上の24年の大問2(1), (2)を解く際に求められるような力、すなわち教科書の例題そのままを「暗記」や「あてはめ」で理解した状態ではなく、じっくり時間をかけて理解した上で何問かの類題を解くことにより獲得される幅のある理解力を指すと考えられます。

しばしば、高2生が「定期テストでは点数が取れるけど、模試となると途端に手が出ない。」と悩んでいるのを耳にします。
これはまさに理解の仕方が「暗記」や「あてはめ」の段階に留まっている状態で、教科書の例題や青チャートの「基本例題」を少し変形した形の問い方がなされた場合への対応力が身に付いていないのが原因なのです。

東北大学発表の文書内に各大問ごとの採点講評がなされていますが、24年の大問1では、

求める図形を勘違いして面積を求めている答案が散見されました。

とあります。かなり基本的な部分で差が付いていることが分かります。

分析力・発想力

この「分析力・発想力」という語ですが、東北大学発表の文書内において、

公式が適用可能ならば適切に使用し、適用不可能ならば試行錯誤して論理的に結果を導き出すための分析能力、発想力、論理的思考能力などが必要です。

なる表現があり、基本の理解を超えて、さらに高度な力まで要求していることが窺えます。問題文や小問どうしのつながりを分析して自分のこれまでやってきた基本事項と結び付け、どのように処理すれば結果を導出できるか発想する力が求められています。

たしかに近年の東北大理系数学においては、融合分野からなる出題やどの分野からの出題かが一見分からないような出題がなされており、まずは分析から始めないとどの分野の基本事項を使えばいいのかすら分かりません。

たとえば上の24年の大問2(2)を解く際には、整数分野・数学的帰納法の内容に気付かないと解けないような設定になっており、一見したところ、気付きづらいです。

こういう設定はほぼ全員にとって初見でしょうから類題を解いて知っているかが問われているのではなく、小問(1)と(2)のつながりを分析したり、どうやったら結論に至るのか発想することが求められます。充分な「基本の理解」がなされてはじめてこの「分析」「発想」はできるのです。

 

もう一問、「分析力・発想力」が求められる大問として、2024年の大問4の(3)が参考となるでしょう。東北大学の講評によると、この小問以降、正答率が下がったとのことです。

下書き欄にでも図を描いて分析をしてみると、平面と平面の交線について問われていると気づくはずです。1つ1つは基本事項ですが、それをどう結び付けていくか発想するには、図を描くとかnが1や2の場合に計算してみるとかの分析の試みが必要です。

明解な答案作成

さて、「明解な答案作成」について説明するには、下の2022年の大問1を見てみましょう。

たとえば、小問(1)を下書き欄にでもただ数式を書き並べるだけで解くという作業は高2生の多くはできると思います。

しかし、数え漏れがないように、重複がないように問題分中のNをカウントするには、自身で数え上げの規則を設けてカウントする必要があります。それを採点者に伝わるように答案作成するのです。

小問(1)に関しては、いわゆる、〇と棒を並べる数え上げに帰着させる解法の結論だけを暗記してきた者にとっては、数式と記号の混ざった断片的な文章しか書くことはできないでしょう。

こういった説明になっていないような答案のことを「導く論理の道筋が明解でない答案」と言っているのだと思うのです。明解とまでは言えないまでも、まずは説明が説明になっている答案を心掛けたいです。

東北大の文書中では、

受験生は全く知らない採点者に考察過程が明確に伝わるよう、論理的で丁寧な説明や証明を記述するための表現能力も必要です。このように、数学の記述式問題に対する答案作成には数々の能力が必要になります。

答案作成の力もよく見ている大学だと分かります。昨年度の講評には、受験生の答案で何を書いているのか分からないような答案が多かった。といったきついコメントもありました。

東北大の理系数学を攻略するための勉強法

これだけ「基本の理解」を求めている大学を志望するのであれば、やや難から難問に分類される大問の対策は高3の夏頃から開始というスケジュールが妥当です。

高2の3月までは、「基本の理解」を徹底するように対策をしていくのが良いでしょう。余裕があれば、「分析力・発想力」を問うような問題演習に進むのがいいです。

以下の項目1.から3.までを高2の3月までに必ずこなしてほしいですし、できれば項目4.にも着手してほしいです。次の章で説明する項目5.は高3の夏頃から始める対策、項目6.は数学で点数を稼ぎたい人向けの内容となっています。
「明解な答案作成」については、「基本の理解」「分析力・発想力」が十分身についてからでよく、例えば、過去問演習などを通じて伸ばしていくのが良いです。

1.用語を丁寧に理解していく

用語を理解するとは、定義を理解することと言い換えても差し支えありません。数学を勉強する上で先を急ぎたい気持ちはよく分かるのですが、数ⅠAや数ⅡBの教科書の用語を正しく説明できるかを確かめてみましょう。

たとえば、教科書や青チャートの「集合」や「命題と条件」といった単元のページを開いてみて、「自分は、本当にこの単元の用語を理解できているのか?」と自問自答してみるとよいです。

数学が苦手な生徒の傾向として、「代入する」と言った用語を勝手に「あてはめる」とか「ぶち込む」とか別の用語でもって言い換えて使用しているというものがあります。

他にも、「少なくとも」「高々」「任意の」「ある」という数学の文章を書く上で頻出であるはずの語がちっとも出てこないという傾向があります。

このようないい加減な用語の使い方をする人が意識的な努力もなしに「明解な答案作成」ができるようになるとは思えません。本当に地味な作業ですが、教科書の用語を正しく説明できるか・使用できるかを確認していきましょう。

2.白チャート・教科書ガイドを使ってみる

教科書に載っている用語の理解が怪しいと感じた人は、白チャートや教科書ガイドがつまづきやすい箇所を詳しく補足しているので、利用してみるのも手です。

たとえば、「点と直線の距離の公式」「三角関数の加法定理」は使い方については多くの人は学びますが、証明をもう一度理解してみる・書き写してみることからは遠ざかっている人は多いのではないでしょうか。教科書を詳細に理解することによって、「基本の理解」が深まります。

3.青チャートの基本例題を覚えてしまうくらい繰り返す

たとえば、「定期テストでは点数が取れるけど、模試となると途端に手が出ない。」といった状態に留まっている人は、青チャートの基本例題を繰り返し解いてみましょう。
そうすると、結果として覚えてしまうことになります。ここで大切なことは、覚えようとするのでなく、結果として覚えてしまうことになるということです。覚えることを目的しては効果が薄れてしまいます。

東北大発表の文書中にある「教科書の公式をなぜこの場合に適用可能なのか」まで理解することは、一段上の視点から教科書の公式を理解することになりますので、初学者にとってはなかなか難しいです。繰り返すことにより見えてくるものもありますので、まずは青チャートの基本例題を繰り返し解いてみましょう。

この3. までを高2の終わりまでに達成できていると、合格可能性が高まります。しかし、これだけでは東北大側から求められている「基本の理解」にはまだ少し及びません。入試問題を解くことにより、「基本の理解」ができているか試してみるのがいいでしょう。

4.青チャートのEXERCISESを解いてみる

青チャートには各単元末に「EXERCISES」と名付けられた例題と関連する問題が数題載っていて、入試問題の過去問やその改題から選ばれています。今現在高3生であり、高校から例えば「重要問題集」「スタンダード数学演習」といった受験学年用の問題集を渡されている人はそちらを利用したほうが重複がなくていいでしょう。

「EXERCISES」や受験学年用の問題集には、教科書の例題から発展した問題が掲載されており、「基本の理解」を超えて「分析力・発想力」まで要求されます。特に、小問分割されていて小問どうしのつながりを分析するような問題が演習価値があり、効果的な東北大学入試対策になります。

また、実際のところは、「EXERCISES」を解いて初めて、教科書に載っている用語が理解できていなかったこと、青チャートの「基本例題」が理解できていなかったことに気付くことができるはずです。この項目4.は高3の7月頃までやっていても不思議ではありません。

「分析力・発想力」を身につけるには

高2生までなら、先ほどの項目4. をこなしていく中で「分析力・発想力」を身に付けるにはまず「基本の理解」が大切なんだと実感できるくらいで充分でしょう。

高3生となると話は別で、入試問題を使った演習を通して「分析力・発想力」を身に付けていくことになります。具体的には、青チャートであれば「重要例題」「演習例題」や「EXERCISES」を利用することになります。もし学校で、「重要問題集」「スタンダード数学演習」を使用しているのであればそちらでも構いません。

東北大学理系数学は2024年から長文化しており、小問数も増えており、より「小問どうしのつながりを分析して自分のこれまでやってきた基本事項と結び付け、結果を導出できるか発想する力」が求められるようになったと言っていいでしょう。

小問どうしのつながりの分析が必要になる問題例として、重要問題集に収録されている下の小問(1),(2)からなる不等式の証明に関する大問を見てましょう。

(1)の不等式を使って(2)の不等式を証明するのだろうという想像は付くと思いますが、どうつながっているでしょうか?

つながりを分析する際には、与えられた等式と(1)の不等式との関係、そして、a, b, cの3文字をx, y, zの3文字の論理関係を問題用紙の下書き欄に書き出すなどの試行錯誤をすることが重要です。最初はこのくらいしないとつながりは見えてこないと思うのです。

また、仮にその関係性が分かったとしても、論理的に正しく表現する答案作成の力を必要とします。

他にも、図形問題なら図を描いていく中で発想が浮かんだり、数列の問題ならn=1, 2, 3の場合を眺めていく中で発想が浮かんだりします。演習を50題くらいこなしていく中で、だんだん力が付いてきます。

ただし、これらの問題集は問題が単元別になっていて東北大学で出題されるような「融合問題」には取り組めませんので、2022年以降の九州大学、北海道大学の過去問を解いてみるのもおすすめです。

「明解な答案作成」をできるようにするには

次に、東北大側から求められている「明解な答案作成」についてですが、制限時間のある試験ではなかなか明解な答案を作ることは難しいです。そこで、いわば「導く論理の道筋が明解でない答案」をまずは脱却することを目指しましょう。

そのような答案作成であれば、青チャートの例題を解いていくうちに、あるいは、真似ていくうちに自然に形にはなってくるのかもしれません。作成した答案の質について気にするようになっている時期には、もう東北大過去問演習に入っているでしょうから、作成した答案を一度数学担当の先生に見ていただくのがいいと思います。

5.東北大の過去問演習を行う

「受験学年用の問題集は各単元ごとの出題となっており、分野融合の問題はあまり収録されておりません。高3の夏頃からは、東北大の過去問を解いてみましょう。分野融合の出題も一部ある過去問を解いてみて、各単元ごとの出題となっている問題集との違いを感じることができると思います。

24年だと空間把握の能力も求められていたり、23年以前だと東北大学は「計算の力」というものを問うていました。

このような総合的な数学の力が問われていることを肌感覚で感じた時点で、数学で点数を稼ぐのか、あるいは、英語や理科で稼ぐのか方針も定まってくると思います。この方針は11月頃に決めるのが理想でしょうか。

6. やや難から難問に分類される大問の対策を行う.

青チャートの「EXERCISES」、あるいは、受験学年用の問題集を数回解き、過去問演習までこなした高3生は、もう既に合格点に到達しているはずです。

この項目6.は、数学で点差を付けたい人、あるいは、高偏差値である学科を志望している人向けの内容になります。2024年の東北大入試数学では、やや難から難問に分類される大問が3つも出題されました。空間の把握も求められており、難易度は高いです。

青チャートの「総合演習」第2部には、単元ごとであるもののやや難から難問に分類される大問が掲載されています。分野融合問題の演習をしたいのであれば、月刊誌「大学への数学」の1月号、2月号で特集されている「総合演習」で対策を進めていくと良いでしょう。

まとめ

東北大の理系数学では、「基本の理解」「分析力・発想力」「明確な答案作成」で差がつくような問題が出題されます。これらの問題を攻略するにあたっては、以下のステップで勉強を進めていきましょう。

1.用語を丁寧に理解していく
2.白チャートや教科書ガイドを使ってみる
3.青チャートの基本例題を覚えてしまうくらい繰り返す
4.青チャートのEXERCISESを解いてみる
5.東北大の過去問演習を行う
6.やや難から難問に分類される大問の対策を行う

1〜3は高2生のうちに(4はできたら)、5、6を高3生のうちにできたら合格できる力を身につけることができるでしょう。

執筆:当塾 数学【カラ破り】コース主任I・T先生

東北大の理系数学の対策ができる数学【カラ破り】コースを開設しました
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この記事を書いた人

百瀬 浩市のアバター 百瀬 浩市 理系のための大学受験塾SoRa 代表/塾長

埼玉県立所沢高校を卒業。現役で東京農工大学工学部に入学。(その他、東京理科大学理学部、明治大学理工学部、芝浦工業大学工学部、東洋大学理工学部にも合格)
大学在学中に大手予備校にて指導経験を積む。大学卒業後、地元の個別指導塾にて教室長を務めたのち、理系のための大学受験塾SoRaを立ち上げて現在に至る。

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