多くの九大志望の高校3年生が、近年の難問揃いの九大理系数学の入試問題を前に今後どんな対策をしていけばのいいか悩んでいます。
九州大学側から問われている力は本格的なもので、合格点を目指すには腰を据えた対策が必要です。
以下では網羅系参考書の定番「青チャート」を日頃使用している高3生を想定して対策法を説明していきます。また、「Focus Gold」を使用している高3生にとっても読み替え可能な文章にはなっていますので、是非参考にしてみてください。
九州大学理系学部の出題形式について
出題形式についてですが、前期日程は試験時間150分で5題、全問記述式で、各大問は小問2〜4つで構成されます。
2022年からは後ほど詳しく紹介しますが、大問4として「長文読解」と呼ばれる形式が登場し、2023年にも出題されています。1問につき30分かけられる記述式試験ということで、本格的な数学力が試されます。
どのような力が問われている問題なのか?
2019年から九大理系数学の問題は難化しており、2023年にはさらに難化して半分も解けていない受験生が多数いたと予想されます。九大だけでなく、北海道大学も東北大学などもここ数年難化しており、この傾向は継続すると考えてよいでしょう。
これは実は、単に難化したというわけでなく出題の方針が変わった結果であると言うこともできます。おそらくは、文科省が新・旧課程の教科「数学科」で掲げている「思考力」「表現力」などを問うているのでしょう。
大問4として登場した「長文読解」と呼ばれる新形式もそれらの力を試すためのものだと思われます。
とはいえ、あまりピンと来ない言葉ばかりが並んでいると思いますので、実際の入試問題を一緒に見ていきながら、どんな力が問われているのかを具体的に解説していきたいと思います。
「思考力」を問われる問題
以下の大問が2023年の九州大で出題されました。近年の九大理系数学の入試問題を象徴するような問題です。

いわゆる「三角形の形状」と題される青チャートなどの参考書の「例題」にも取り上げられている問題です。多くの受験生は(2)の4次式が2次式である場合の問題を解いて来ていると思います。
もちろん、出題者側も教科書に2次式である場合の問題が掲載されていることを知った上で、4次式である場合を考えさせたいのです。2次式である場合をなぜ解けるのかまで理解した上で、(1)をどう結び付けるのか推論させようという出題意図です。
(1)と(2)がどう繋がるんだろうと頭の中でいろんなパターンを想像して解法を練り上げる作業を「推論」とここでは呼んでいます。「推論」の力が問われているのに、自分は4次式の場合まで解いてこなかったから解けないんだと考えていては、なかなか合格点は取れません。
小問に分割された大問が出題される九大理系数学の入試問題の対策として、「推論」のトレーニングを積むのが正しい道です。
他にも「思考力」を問う問題として「整数問題」も昔から九大入試数学では出題されてきました。また、「すべて○○に対して、△△が成り立つ。」と言った、いわゆる全称命題を扱う力を問う大問も、23年の大問3(下図)で出題されています。

この大問をベクトルの単元の理解が不足しているために解けないのだ、と考えていては遠回りになってしまいます。全称命題や存在命題を扱う思考力の養成を意識したトレーニングをしないとこういった問題はなかなか解けるようにはなりません。
「表現力」を問われる問題
この力は多くの文脈で「論証」と呼ばれている力です。自分自身で筋道を立てて論理的な説明を積み上げていく作業をここでは「論証」と呼んでいます。
以下の2023年に九大入試問題で出題された大問を見てみましょう。

この問題の漸化式は青チャートの例題で取り上げられている典型的なものとは異なります。すべての受験生が初見でこの漸化式に挑むことを想定して作問した大問です。
各小問ごとに収束、発散を予想し、論理的な説明を積み上げていくことなります。計算ドリルのように数式を並べていく答案作成とは異なる能力が問われます。
これまで、こういった論証の力を求められる問題は難関大の後期試験によく出題されており、それらが近年は九大前期の理系数学においても出題されている状況だと言えるでしょう。
そうは言っても標準問題も出題
ここまで読んでくれた方には九大の試験では難しい問題ばかりが出題されると思わせてしまったかもしれません。しかし、先ほどまで挙げたような難問だけでなく、標準的な問題も出題されています。
2022年,2023年の大問5の数学Ⅲ(積分法の応用)からの出題が標準問題に分類されるでしょう。易しいというわけではありませんが、解法の選択に迷うこともなく正確に計算を進めていくだけの問題です。
青チャートなどの例題を解いて準備を進めていくことにより、九大志望者であれば誰でも高得点を狙える大問ですので、是非とも高得点を目指した準備をしたいです。
また、「推論」や「論証」といった力も、あくまで青チャートの例題、特に「基本例題」と名付けられている例題、の理解が前提となっていますので、今の段階で「基本例題」を解き切れていない人は数学Ⅲを中心に「基本例題」の理解を急ピッチで進めましょう。
合格点を勝ち取るための対策
九大理系数学の入試問題で合格点を取るためには、何に注意しながら勉強していけばいいかを説明していきたと思います。
イメージとしては、数学の点数で合格者平均点+15点くらいの目標設定の受験生向けの対策を、優先順位を付けて示していきます。
1. 「基本例題」を解き切ること
難易度の高い試験では合格点が低くなるため、一問一問の重みが大きくなります。その中で合格者が解くような標準問題を落としてしまうと、他の受験生と大きく差が付いてしまうのです。
つまり、とにもかくにも標準問題で点をとることが最優先になります。
そのためには、青チャートの例題、特に「基本例題」はすべて解けるようにしましょう。ただ、解けるだけではなく、迷わずにスピーディに解けるようになっていることが重要です。
2.「推論」「論証」の力の養成
これには、青チャートの「総合演習」か「実戦重要問題集」のB, C問題を使ってトレーニングをしましょう。いずれも100問ちょっとの小問に分割された入試問題を多く扱っていますので、「推論」「論証」という力を試すために出題されたものも数多く含まれています。
試しに、下の小問(1),(2)からなる不等式の証明に関する大問を見てましょう。この問題は重要問題集に収録されている問題です。

ある程度の量、入試レベルの問題を解いてきた人であれば、問題をよく読んで少し考えると、 (1)の不等式を使って(2)の不等式を証明するのだろうという想像は付くと思います。
しかし、(1)の不等式をどう使うかは「推論」のトレーニングを積んできていない受験生にはすぐには分からないはずです。
取り組む際には、与えられた等式と(1)の不等式との関係、そして、a, b, cの3文字をx, y, zの3文字の論理関係を問題用紙の下書き欄に書き出すなどの試行錯誤をすることが重要です。また、仮にその関係性が分かったとしても、論理的に正しく表現する論証の力を必要とします。
こういった「推論」「論証」のトレーニングを青チャートの「総合演習」や「実戦重要問題集」を進めていくことで、九州大の対策を進めることができます。
ただし、これらの問題集は問題が単元別になっていて「融合問題」に取り組めないので、2022年以降の東北大学、北海道大学の過去問を解いてみるのもおすすめです。
3. 新傾向「長文読解」の形式である大問4の対策
九州大では「長文読解」形式の問題が出題されると話しましたが、以下が実際に九大の理系数学で出題された長文読解形式の問題です。

実際に解いてみれば分かると思いますが、この大問4を6割の点数を取ろうという視点で見れば、それ程難しい問題ではありません。対策としては教科書の理解が必要です。
自覚することは難しいかもしれませんが、教科書を理解している高3生は実は極めて少ないのです。教科書の中で、
「微分可能であることの定義は何なのか?」
「三角関数が微分可能であることの証明はどう書かれているか?」
「指数の概念はどの順で拡張されていくのか?」
「点と直線の距離の公式はどう導出されるのか?」
「三角関数の加法定理の証明はどうなされているのか?」
などを何となく読むのではなく、実際に自分の手を動かしながら誤魔化さずに読むことが大事です。これは共通テスト対策にもなります。
実際は、以上の優先順位1位から3位の項目に書かれたことをこなすだけで数学科目での合格者平均点+15点が達成されるでしょう。以下の項目4.から6.は余裕がある受験生向けです。
4.「整数問題」を解くための力の養成
整数問題を攻略するには、赤チャート数学ⅠAの整数を扱った単元を徹底してやってみるのがおすすめです。赤チャートの数ⅠAの単元は、体系化されていて近年の九大入試数学に対応した深さまで書かれており、量の観点から見ても最適だと思います。
この単元に関してだけは青チャートよりも赤チャートを選ぶのが良いです。合同式やフェルマーの小定理どころかオイラー関数まで扱っています。
ここまで知っていたほうが九大入試数学には有利なのです。高1の頃は難しく感じても高3の秋くらいには読み切れる内容になっていると思います。
5.一歩先の「推論」「論証」の訓練をする
九州大の問題を攻略していく上で、一歩先の「推論」「論証」の訓練をすることも有効です。具体的には、以下の23年の大問2をもう一度眺めてみましょう(先程、紹介した問題と同じです)

この大問がもし小問に分割されていなかったら、自分で場合分けの基準を設定して論理的な文章を積み上げていくことになります。まずは、初項を0や1と設定して、数列がどう変化していくか実験して、ようやく場合分けの基準が見えてくることになります。
九大の数学の問題は、小問2〜4つある問題がほとんどなので、小問に分割されていない問題が出題されることはほとんどありません。しかし、小問に分割されていない問題に挑戦すると、「推論」「論証」の力をグッと高めることができます。
たとえば、京都大学の有名な過去問で「tan 1°は有理数か?」というのがあります。このような小問分割しない大問で、方針まで受験生に決めさせる出題を好む大学の過去問の演習をするのも、一歩先の「推論」「論証」の訓練になるはずです。
6. 全称命題や存在命題を扱う力の養成
この2つの命題を解く力の養成を正面から扱った参考書の代表例は「入試数学の掌握(総論編)」(エール出版社)です。3巻本の1巻目に相当する参考書です。この本を半分でも理解すれば、合格点を取ることを目指す対策としてはもう十分でしょう。
九州大学の過去問を解いていて、「難しく感じるが、その難しさの原因が何か言い表せない。」と思っている人は、難関大の入試問題の文中には、
「証明せよ」
「必要十分条件を求めよ」
「少なくとも1つ存在することを示せ」
「ただ1つ存在することを示せ」
などの文言が頻繁に登場することになんとなく気付いていると思います。
「入試数学の掌握(総論編)」では、これらの文言が登場する入試問題を解くための鉄則を提示し、充分過ぎる対策ができます。30問も解いていれば、ライバル達に負けない実力がついてくることでしょう。
ただ時間がない人は、青チャート「EXERCISE」「総合演習」内の「証明せよ」「必要十分条件を求めよ」「すべて○○に対して、△△が成り立つこと」「少なくとも1つ存在することを示せ」が登場する問題のみ選択して解くので十分です。
部分点を狙う姿勢も大事
2023年のように半分も解けていない受験生が多数いると予想されるような難問揃いの試験の場合は、部分点を狙う姿勢が大切になってきます。
難問揃いの九大理系数学では、標準問題である大問以外では満点の50点を取ることは難しいでしょう。
単純に計算すると1つの大問につき30分かけられる試験になります。30分かけても完答できない大問が複数問並んでいる九大理系数学においては、1つの大問を解き切るまで粘っていると5問中3問しか手を付けられなかったという結果になりかねません。
たとえば、ある大問の前半部にノータッチだと、合格者が全員正解しているような易しい問題を落としてしまっている可能性があります。そうなってしまっては、ライバル達との競争に勝つことはできません。
そのような事態を防ぐためにも、各大問の初めの方の小問を解けるようにして、部分点を狙う姿勢が非常に重要になります。
まとめ
受験生の限られた時間の中での対策になりますので、優先順位の1.から3.の途中までしか行き着けない人も多いでしょう。特に現役生は限られた時間内での対策となりますので、英語や理科に割く時間とのバランスを考慮しつつの受験対策をしていきましょう。
九大の理系数学の対策ができる数学【カラ破り】コースを開設しました
↓↓
旧帝大などの難関国公立、早慶などの難関私立、医学部などを志望している方や、共通テストや二次試験において数学で高得点を狙っている方で、数学がこんな状態になっていないでしょうか。
・基礎レベルの問題は解けるのに入試レベルになると手も足もでない。
・塾や参考書などで数学をたくさん勉強してきたにも関わらず数学が伸びない。
・勉強量に反比例して数学の成績が落ちてきている。
・過去問を解いても合格点に届く気がしない。
毎年、当塾ではこういったご相談を多く受けます。
しかし、ある程度基礎力がついているにも関わらず数学で点数が取れない理由は、次のことが原因となっています。
なぜ数学の力が伸びないのか
ある程度のところまでは演習量で何となるものの、一歩上のレベルに行きたいと思っているのに、その”カラ”を破れないのには原因があります。
それは、参考書や塾で学んだことの表面しか見れていないからです。その裏側にある、他の問題や内容とのつながり、どういったことを意図して解いているのかといった立体的な視点を持つ必要があります。

↑の図のように、問題の裏側にあるものをどれだけ読み取って理解することが、数学で安定して点数を取ることに直結するのです。
ちまたでは、「参考書ルート」と呼ばれるものがあります。これは、この大学に行くにはこの参考書を解いておけば良いと言われるものです。
しかし、そのルート通りにやって合格する力が保証されるのなら、入試の合格最低点は高くなりもっと過激な競争になっているはずですが、そうはなっていません。
そのルートをたどって勉強しても合格できる人とできない人で別れてしまうのです。ルートをたどっても必ずしも合格できるだけの数学力がつくわけではない理由も、その参考書の裏側にあることをどれだけくみ取れているかが人によって違うためです。
解答の行間や解法の発想などの書いていないことをどれだけ拾えるかが重要になります。
では、こういったことを独学でやっていけるのかというと、これまで裏側を読み取れていなかった人が急に読み取るのは難しいです。
これまでどんな姿勢で問題を解いてきたか、どんなことを意識して勉強してきたかで左右されてしまう側面があるため、急にそれを一人でやろうとしても難儀してしまうのです。
そこで、SoRaでは、問題演習はしているのに成績が伸びてこないと悩んでいて、目に見えていない部分で躓いている方を指導するためのコースを新設しました。
数学【カラ破り】コースって何?
社会人講師によるマンツーマンの90分授業
これまで数多くの入試問題を解き、数多くの生徒さんを指導してきた経験豊富な社会人講師が担当します。
授業は、基本的に「内容解説→演習→解説」という流れで行っていきます。
※そのときの状況次第では進め方を臨機応変に変えていきます。

過去問の添削指導
過去問などの記述問題に対する添削指導も行います。
現在も大学で教鞭をとる講師も在籍しているため、より採点現場に近い視点での添削を行います。
また、個々人の特性や志望校に合わせても添削を行うため、意識して直してほしい部分を段階を踏んで修正していきます。

あなただけの特別課題
毎週の課題として、あなただけの特別課題を作成します。
現状の数学力を踏まえた上で、基礎~応用に関係なく、今あなたが解くべき問題を担当講師がセレクトして出題します。
また、直前期では志望校の傾向も踏まえた上で、あなたの数学力を上げるために必要な問題を提供します。

24時間質問対応可能!
幣塾では、Slackというチャットアプリを用いて、24時間質問が可能となっております。授業外でも分からないことがあれば、いつでもどこでも気軽に質問を行うことができます(基本的に返信は24時間以内に行います)
オンライン自習室を利用可能
㈪~㈯の10:00~22:00の間でオンライン自習室を使うことができます。講師が在室している際には、直接質問することもできます。
【指導対象】
東京大、京都大、大阪大、名古屋大、東北大、九州大、北海道大、東京工業大、一橋大、神戸大、千葉大、各大学医学部、早稲田大学、慶応大学
といった難関大を志望されている方。
その他、共通テストや二次試験で数学で高得点を取りたい方。
文系・理系は問いません!
【定員】
指導可能な講師の人数に限りがございます。定員は現在3名とさせて頂きます。
数学【カラ破り】コースを担当する講師の指導を受けていた生徒さんの合格体験記はこちら↓
「どんな指導内容なのかもっと詳しく知りたい」「体験授業を受けてみたい」という方は、下記の申込フォームよりお申込みくださいませ。
理系のための大学受験塾SoRaでは、
理系の受験生の悩みを全て解決します。

受験を乗り越えられるか不安
何から始めれば良いか分からない
このままで合格できる気がしない
理系専門の先生に教えてもらいたい
理系で受験する人なら、どの研究分野に進むか、どんな勉強法でやっていけば良いかなど、さまざまなことに悩むと思います。そんな悩みは、SoRaの無料体験相談でぶつけて下さい!
これまに理系の受験生を指導してきた豊富な経験や、先生自身の経験を元に、どんなに些細な悩み事でも親身になって相談に乗ります。

理系専門の先生に
教えてもらいたい
このままで合格できる
気がしない
受験を乗り越えられるか
不安
何から始めれば良いか
分からない
理系で受験する人なら、どの研究分野に進むか、どんな勉強法でやっていけば良いかなど、さまざまなことに悩むと思います。そんな悩みは、SORAの無料体験相談でぶつけて下さい!
これまでの理系の受験生を指導してきた豊富な経験や、自分自身の経験を元に、どんなに些細な悩み事でも親身になって相談に乗ります。
無料受験相談&指導
定期テスト無料体験指導
お申込みフォーム
※無料受験相談&指導は入会を強制するものではありません。
ご入力頂きましたメールアドレスまたは、携帯電話の方に24時間以内にご連絡を差し上げます。
理系のための大学受験塾SoRa
Email:contact@rikei-sora.com