【2024年版】九大の理系数学 傾向と合格に向けた対策

多くの九大志望の高校3年生が、近年の難問揃いの九大理系数学の入試問題を前に今後どんな対策をしていけばのいいか悩んでいます。

九州大学側から問われている力は本格的なもので、合格点を目指すには腰を据えた対策が必要です。

以下では網羅系参考書の定番「青チャート」を日頃使用している高3生を想定して対策法を説明していきます。また、「Focus Gold」を使用している高3生にとっても読み替え可能な文章にはなっていますので、是非参考にしてみてください。

目次

九州大学理系学部の出題形式について

前期日程の出題形式について、まずは以下にまとめます。

試験時間 150分
大問数 5問
形式 各大問は小問2~4つで構成。全問記述式。

また、2024年度の入試では出題されませんでしたが、2022年から2年間は大問4「長文読解」形式の問題が登場していました。

どのような力が問われている問題なのか?

2019年から九大理系数学の問題は難化していましたが、2024年には標準からやや難の問題が並ぶ出題となりました。しかし、他の旧帝大のここ数年続く難化傾向から、2025年には再び手ごわい数学の問題が出題されると考えてよいでしょう。

この傾向は実は、単に難化したというわけでなく、出題の方針が変わった結果であると言うこともできます。おそらくは、文科省が新・旧課程の教科「数学科」で掲げている「思考力」「表現力」などを問うているのでしょう。
とはいえ、あまりピンと来ない言葉ばかりが並んでいると思いますので、実際の入試問題を一緒に見ていきながら、どんな力が問われているのかを具体的に解説していきたいと思います。

「思考力」を問われる問題

以下の大問が2023年の九州大で出題されました。近年の九大理系数学の入試問題を象徴するような問題です。

いわゆる「三角形の形状」と題される青チャートなどの参考書の「例題」にも取り上げられている問題です。多くの受験生は(2)の4次式が2次式である場合の問題を解いて来ていると思います。

もちろん、出題者側も教科書に2次式である場合の問題が掲載されていることを知った上で、4次式である場合を考えさせたいのです。2次式である場合をなぜ解けるのかまで理解した上で、(1)をどう結び付けるのか推論させようという出題意図です。

(1)と(2)がどう繋がるんだろうと頭の中でいろんなパターンを想像して解法を練り上げる作業を「推論」とここでは呼んでいます。「推論」の力が問われているのに、自分は4次式の場合まで解いてこなかったから解けないんだと考えていては、なかなか合格点は取れません。

2024年にも、同じく複素数平面からの出題で、この「推論」の力が問われるものが出ています。2025年の入試においても「思考力」を問う問題として、この「推論」の力が問われると考えていてよいでしょう。

ですので、小問に分割された大問が出題される九大理系数学の入試問題の対策として、「推論」のトレーニングを積むのが正しい道です。

他にも「思考力」を問う問題として「整数問題」も昔から九大入試数学では出題されてきました。また、2024年には以下のような出題がなされており、今後も「整数問題」は頻出のテーマと考えていいでしょう。

「表現力」を問われる問題

この力は多くの文脈で「論証」と呼ばれている力です。自分自身で筋道を立てて論理的な説明を積み上げていく作業をここでは「論証」と呼んでいます。

以下の2023年に九大入試問題で出題された大問を見てみましょう。

この問題の漸化式は青チャートの例題で取り上げられている典型的なものとは異なります。すべての受験生が初見でこの漸化式に挑むことを想定して作問した大問です。

各小問ごとに収束、発散を予想し、論理的な説明を積み上げていくことなります。計算ドリルのように数式を並べていく答案作成とは異なる能力が問われます。

これまで、こういった論証の力を求められる問題は難関大の後期試験によく出題されており、それらが近年は九大前期の理系数学においても出題されている状況だと言えるでしょう。

そうは言っても標準問題も出題

ここまで読んでくれた方には九大の試験では難しい問題ばかりが出題されると思わせてしまったかもしれません。しかし、先ほどまで挙げたような難問だけでなく、標準的な問題も出題されています。

2022年,2023年, 2024年の大問5の数学Ⅲ(積分法の応用)からの出題が標準問題に分類されるでしょう。

教科書レベルのやさしい問題であるわけでもないのですが、青チャートの例題を解いて準備してきた受験生にとっては、解法の選択に迷うこともなく正確に計算を進めていくことができたでしょう。

青チャートなどの例題を解いて準備を進めていくことにより、九大志望者であれば誰でも高得点を狙える大問ですので、是非とも高得点を目指したいです。

また、「推論」や「論証」といった力も、あくまで青チャートの例題、特に「基本例題」と名付けられている例題、の理解が前提となっていますので、今の段階で「基本例題」を解き切れていない人は数学Ⅲを中心に「基本例題」の理解を急ピッチで進めましょう。

合格点を勝ち取るための対策

九大理系数学の入試問題で合格点を取るためには、何に注意しながら勉強していけばいいかを説明していきたと思います。

イメージとしては、数学の点数で合格者平均点+15点くらいの目標設定の受験生向けの対策を、優先順位を付けて示していきます。

1. 「基本例題」を解き切ること

難易度の高い試験では合格点が低くなるため、一問一問の重みが大きくなります。その中で合格者が解くような標準問題を落としてしまうと、他の受験生と大きく差が付いてしまうのです。

つまり、とにもかくにも標準問題で点をとることが最優先になります。

そのためには、青チャートの例題、特に「基本例題」はすべて解けるようにしましょう。ただ、解けるだけではなく、迷わずにスピーディに解けるようになっていることが重要です。

2. 「重要例題」「演習例題」まで解く

教科書には載っていないが、入試では典型問題であるものが青チャートの「重要例題」「演習例題」に取り上げられています。2024年の大問5は、青チャート数学Ⅲの「重要例題」の中に似たものがあります。九州大学で出題される標準問題に分類される大問は、青チャートの演習を積むことにより対策が立ちます。

3.「推論」「論証」の力の養成

これには、青チャートの「総合演習」か「実戦重要問題集」のB, C問題を使ってトレーニングをしましょう。いずれも100問ちょっとの小問に分割された入試問題を多く扱っていますので、「推論」「論証」という力を試すために出題されたものも数多く含まれています。

試しに、下の小問(1),(2)からなる不等式の証明に関する大問を見てましょう。この問題は重要問題集に収録されている問題です。

ある程度の量、入試レベルの問題を解いてきた人であれば、問題をよく読んで少し考えると、 (1)の不等式を使って(2)の不等式を証明するのだろうという想像は付くと思います。

しかし、(1)の不等式をどう使うかは「推論」のトレーニングを積んできていない受験生にはすぐには分からないはずです。

取り組む際には、与えられた等式と(1)の不等式との関係、そして、a, b, cの3文字をx, y, zの3文字の論理関係を問題用紙の下書き欄に書き出すなどの試行錯誤をすることが重要です。また、仮にその関係性が分かったとしても、論理的に正しく表現する論証の力を必要とします。

こういった「推論」「論証」のトレーニングを青チャートの「総合演習」や「実戦重要問題集」を進めていくことで、九州大の対策を進めることができます。

ただし、これらの問題集は問題が単元別になっていて「融合問題」に取り組めないので、2022年以降の東北大学、北海道大学の過去問を解いてみるのもおすすめです。

4.「整数問題」を解くための力の養成

整数問題を攻略するには、赤チャート数学ⅠAの整数を扱った単元を徹底してやってみるのがおすすめです。赤チャートの数ⅠAの単元は、体系化されていて近年の九大入試数学に対応した深さまで書かれており、量の観点から見ても最適だと思います。

この単元に関してだけは青チャートよりも赤チャートを選ぶのが良いです。合同式やフェルマーの小定理どころかオイラー関数まで扱っています。

ここまで知っていたほうが九大入試数学には有利なのです。高1の頃は難しく感じても高3の秋くらいには読み切れる内容になっていると思います。

5.一歩先の「推論」「論証」の訓練をする

九州大の問題を攻略していく上で、一歩先の「推論」「論証」の訓練をすることも有効です。具体的には、以下の23年の大問2をもう一度眺めてみましょう(先程、紹介した問題と同じです)

この大問がもし小問に分割されていなかったら、自分で場合分けの基準を設定して論理的な文章を積み上げていくことになります。まずは、初項を0や1と設定して、数列がどう変化していくか実験して、ようやく場合分けの基準が見えてくることになります。

九大の数学の問題は、小問2〜4つある問題がほとんどなので、小問に分割されていない問題が出題されることはほとんどありません。しかし、小問に分割されていない問題に挑戦すると、「推論」「論証」の力をグッと高めることができます。

たとえば、京都大学の有名な過去問で「tan 1°は有理数か?」というのがあります。このような小問分割しない大問で、方針まで受験生に決めさせる出題を好む大学の過去問の演習をするのも、一歩先の「推論」「論証」の訓練になるはずです。

部分点を狙う姿勢も大事

2023年のように半分も解けていない受験生が多数いると予想されるような難問揃いの試験の場合は、部分点を狙う姿勢が大切になってきます。

難問揃いの九大理系数学では、標準問題である大問以外では満点の50点を取ることは難しいでしょう。

単純に計算すると1つの大問につき30分かけられる試験になります。30分かけても完答できない大問が複数問並んでいる九大理系数学においては、1つの大問を解き切るまで粘っていると5問中3問しか手を付けられなかったという結果になりかねません。

たとえば、ある大問の前半部にノータッチだと、合格者が全員正解しているような易しい問題を落としてしまっている可能性があります。そうなってしまっては、ライバル達との競争に勝つことはできません。

そのような事態を防ぐためにも、各大問の初めの方の小問を解けるようにして、部分点を狙う姿勢が非常に重要になります。

まとめ

受験生の限られた時間の中での対策になりますので、優先順位の1.から3.の途中までしか行き着けない人も多いでしょう。特に現役生は限られた時間内での対策となりますので、英語や理科に割く時間とのバランスを考慮しつつの受験対策をしていきましょう。

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この記事を書いた人

百瀬 浩市のアバター 百瀬 浩市 理系のための大学受験塾SoRa 代表/塾長

埼玉県立所沢高校を卒業。現役で東京農工大学工学部に入学。(その他、東京理科大学理学部、明治大学理工学部、芝浦工業大学工学部、東洋大学理工学部にも合格)
大学在学中に大手予備校にて指導経験を積む。大学卒業後、地元の個別指導塾にて教室長を務めたのち、理系のための大学受験塾SoRaを立ち上げて現在に至る。

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