【2024年版】北大の理系数学で合格点を取るには重要問題集で足りるのか?
高3の9月以降、北大の理系学部を受験する人から「夏休み明け以降どんな問題集をやればいいですか?」という質問をよく耳にします。その中で、特に「この参考書はどうですか?」と聞かれるのが、「実践 数学重要問題集」です。
今回はズバリ、北大の理系数学で合格点を取るには重要問題集で足りるのかについて説明をしていきます。
【この記事を読むべき人】
- 北大の理系学部に絶対に合格したい人
- 重要問題で戦えるか知りたい人
- 北大の二次試験の数学でどんな対策をすればいいか知りたい人
【自己紹介】
I・T先生
「理系のための大学受験塾SoRa」の数学【カラ破り】コース主任。京都大学理学研究科数学・数理解析専攻修士課程修了。現在は、5つの大学で数学の授業を受け持ち、大学生に数学を教える傍ら、SoRaの難関大志望者の指導にもあたっている。2023年には指導した生徒で北大総合理系の合格者も輩出している。
重要問題集はどんな問題集か?
重要問題集は、毎年度改訂され出版される入試問題集です。多くの問題は最近5カ年から取り上げられていますが、中にはもっと古いものも取り上げられています。
理系用だと総問題数301題。難易度順にA, B, Cと分類されていますがC問題は計15題程度で東大志望の人向けです。必解の印が付いている問題は170題ちょっとで、これが典型的な頻出の問題となっています。
中には過去の九州大学や東北大学の問題なども入れられており難易度としては充分高く、一般的な入試対策としてはこの必解問題を解くだけでも価値があります。
ただし、青チャートやフォーカスゴールドの基本例題で習うような解法や教科書の内容がインプットされていない人は、まだ手を出すべき参考書ではないことに注意しましょう。
たとえば、令和6年度北海道大学発表の文書「令和6年度一般選抜(前期日程)数学β採点講評」(リンクはこちら)によると、
下に凸という概念を理解していない答案が多く見受けられた。
R6_A-Mathanswer2.pdf (hokudai.ac.jp)
とありました。教科書の内容や基本的な解法を習得してから、受験学年用の問題集に取り組みましょう。
重要問題集は北大の理系数学の対策として最適か?
重要問題集は北大理系学部受験において合格点ぎりぎりを目指す対策としては十分ですが、万全の対策にはなりません。以下にそのように結論づけた3つの理由を説明します。
① 重要問題集は良い意味でも悪い意味でも万人向けだから
重要問題集に限らず、受験学年用の問題集というのは編集方針としてどうしても典型問題や頻出問題を並べざるを得ません。理系の難関大志望者全員をターゲットにしているからです。つまり、当たり前のことではありますが、北大理系志望者だけをターゲットとした問題集ではないのです。
全体的な難易度や出題傾向が若干違うので、対策として外しはしないものの、ドンピシャで北大の対策ができるかというと微妙な内容になっています。
そのため、他の大学も検討していて北大以外の大学の志望度も高い場合には、重要問題集はある意味”スタンダード”な良い問題集であると言えます。しかし、北大しか考えてない人にとっては重要問題集は対策として中途半端なものになってしまいます。
② 北大の入試問題は典型から離れた出題をする傾向にあるため
2つ目の理由は、北大の理系数学は典型から離れた出題をする傾向にあるからです。北大の理系数学は、2022年, 2023年はそれ以前と比べて難化だったものの、2024年にいったん標準問題のみで構成される出題となりました。2024年はこういった出題では差が付かなかったでしょうから、2025年は”やや難”から”難”の大問が1つか2つ混ざった出題となると考えて対策を進めるのがよいと思います。
以前の北大の理系数学では教科書や青チャートに取り上げられている例題のような問題が出題されていました。それでも完答は難しいものの、受験生にとってはどの道具を使うのか発想がしやすく、まさしく、典型問題と呼べるような問題です。
しかし、2022, 2023年の理系数学の問題を眺めると教科書の例題と似た問題は少なくなり、典型問題とも分類されない大問も多くなりました。典型から離れた出題をして、受験生がどう解くかを見ているのだと思います。
では具体的に、どういった出題だと重要問題集では対応しづらいのかを見ていきましょう。
たとえば、北大の理系数学は「n回投げたサイコロ」「確率漸化式」のようにnが混ざった確率の問題が頻出であり、重点的に対策すべきですが、重要問題集にはその種の問題の数は多くはありません。
他にも、過去2年で絶対値の混じった問題が2題出題されていますが、重要問題集に載っている問題からの類推により解けた受験生は少ないはずです。仮に数学が得意で数学で差をつけようと考えた受験生がいても、典型問題だけを解いてきた人は突破できなかったでしょう。
つまり、2025年の入試に向けて、合格最低点を狙うなら基礎力がもちろん大事なのですが、そこからさらに上げていくことを考えたときに、重要問題集とは違う別のアプローチをも探らねばならないわけです。
➂ 複数の単元を融合させた問われ方に対応できない
3つ目の理由は、重要問題集では複数の単元が融合した問題に対応しにくいからです。重要問題集は問題の構成上、単元ごとに問題が書かれているため、融合問題であることに気づき、対応する力を養うことができません。
近年の北大の入試では、融合問題が頻出していますが、融合問題であることにまず気づくことが難しい問題が出題されています。たとえば、2023年大問1は以下のような問題が出題されました。
この問題は、複素数平面の問題に分類されます。⑴の問題文を読むと「数学的帰納法で示せ。」という指示がありませんが、数列分野で習う数学的帰納法を使って解く問題になっています。
試験当日、帰納法による解法を思いつかなった受験生もいると思います。この指示がないというのはたいしたことでないように思えますが、以前から難関大学ではこの種の「敢えて、数学的帰納法で示せ、という指示を書かない」という作問がありました。
要は、「すべての自然数nに対して」という問題文に反応して「もしかして数学的帰納法使うのでは?」と推測させたいわけです。こういったことに気づいて思い付くかどうかで15点は違ってくるでしょう。
他にも、2023年大問4では⑴で確率を問われているので、確率の問題と思いきや、不等式|x+y|≦|x|+|y|が有効な問題となっており、これも分野融合問題と言えるでしょう。
では、どう対策するのが良いか?
北大の理系数学の対策に限らず、受験で合格を掴み取るには何をどう進めていくかが大事になってきます。何度も言うようですが、基礎が固まっていなければ基礎固めが優先です。その上でどう対策を進めていけば良いかについて説明していきます。
まずは教科書の用語を押さえてみる
北大発表の文書内で指摘されているように、教科書の用語を精確に理解できていない受験生が思いのほかいることに皆さんも注意を払って欲しいのです。「数学ⅠAⅡBの教科書の用語を正しく説明できるか?」と聞かれると、なかなか説明できない生徒が実際は多いと思うのです。
教科書の太字体になっている用語やたとえば青チャートの各単元の「基本事項」という用語が整理されているページを、「この用語は本当に理解しているのか?」と自問しながら、読み直しましょう。
九大や東北大など出題意図が似ている大学の過去問を解いてみる
複数単元が融合された問題の対策に向いた参考書・問題集はどれもレベルが高く、こなすのに時間がかかってしまいます。そこで、対策方法として、北大の理系数学の過去問に加えて、2020-2024年の九州大学と東北大学の理系数学の過去問を解くことをおススメします。
これらの問題は北大の理系数学と出題意図が似ており演習価値が高いです。解いてみると教科書の例題に対応するような出題ではないことに気付くと思います。
こういった問題に早くから慣れておくに越したことはありませんが、遅くとも、11月の模試のラッシュが終わった時期くらいから融合問題の対策に入りたいものです。
公式や定理、問題の解法ごとにノートを作成する
上記で紹介したことをただやるだけではなく、自分の思考を言語化するノートを作るべきです。
北大の理系数学のような難しい問題に対峙する上で、「〇〇の使いどころ」「証明に詰まった時に探ってみるべき手法」といったまとめノートを作成して問題の見方を広げていくことが大事になってきます。
例えば、三角不等式と呼ばれる|x+y|≦|x|+|y|という不等式があります。
おそらく、何も意識せずに学んでいると何となくそういう式があるんだという認識で止まってしまうかもしれませんが、その式がどのように応用されるのか、どのような問題で出題されるのか、考察を深めることが大事になってきます。
先ほど書いた「特に指示がない」問題を攻略するには、そういった考察を通じて、問題の理解度を上げていく必要があるのです。例えば、青チャート数ⅡBには、三角不等式に関連した「基本例題」や「練習」が複数題載っていますので、それを利用して「使いどころ」「手法」を整理していきたいです。
入試当日に、典型から離れた出題がなされ、いざ文脈が変わると、意外に解法の引き出しが開かないという人は多くいます。
まとめ
高3の9月からの対策ということで、重要問題集が北大対策として使えるのかを説明してきました。
重要問題集自体は万人向けの問題集ですので、北大以外をどれだけ考えているかで使うのかどうかを判断すると良いでしょう。2025年の北大入試ではおそらくやや難から難の出題があるので、北大対策に絞って勉強をしていくなら、九州大や東北大の過去問を解くことをおススメします。
また、問題を解くだけではなく、公式や定理、問題の解法についてどんな場面で使われるのかなどの考察をし、理解を深めることが重要になってきます。
ここまで読んで頂きありがとうございまます。
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