【2024年版】名古屋大志望の理系受験生が夏以降にやるべき数学の参考書・勉強法

今回は、理系の名古屋大志望の受験生が夏以降にやるべき参考書・勉強法をお伝えします。おそらく、現時点での実力で過去問に太刀打ちできず、苦しんでいる人も多いかと思います。名古屋大の数学レベルまでどうやって引き上げていくのかを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

また、高1,2生などこれから名古屋大に向けて勉強しようという人はこちらの記事を参照ください。
【2024年版】名古屋大の理系数学の傾向と対策 攻略のための勉強法

【この記事を読むべき人】

  • 名古屋大の理系数学で合格平均点以上を取りたい受験生
  • 名古屋大の理系数学の対策で夏以降に何をしたらいいか悩んでいる受験生
  • 過去問を解いても解けるイメージが湧かなかった受験生

【自己紹介】
I・T先生
「理系のための大学受験塾SoRa」の数学【カラ破り】コース主任。京都大学理学研究科数学・数理解析専攻修士課程修了。現在は、5つの大学で数学の授業を受け持ち、大学生に数学を教える傍ら、SoRaの難関大志望者の指導にもあたっている。

目次

名古屋大学理系数学の出題範囲・形式について

出題範囲(前期日程)
情報学部自然情報学科、情報学部コンピュータ科学科、理学部、医学部医学科、医学部保健学科、工学部、農学部

・数学Ⅰ、数学A、数学Ⅱ、数学Ⅲは全範囲
・数学Bは「数列」
・数学Cは「ベクトル」と「平面上の曲線と複素数平面」
試験時間150分
問題数大問4題
出題形式各大問は小問2~5つで構成
※これまで一部の年度では、小問分割されてないものも出題
頻出分野確率、数Ⅲ微積分、数学C複素数平面
※名古屋大学HP内の一般選抜の実施教科・科目等(令和7年度選抜)を参照。2024年3月29日時点の情報です。
※個別学力検査(2次試験)においては、問題文とともに数学公式集というものが配られます。
この公式集を見たい方は名古屋大学HP内の「入試問題および正解・解答例等」というページ内の各年度の問題文のpdf file内に収録されていますのでご覧ください。

問題の難易度や頻出分野は?

近年の名古屋大学の入試数学においては、教科書の例題に基礎をおきつつも、それらから発展・融合したような出題がなされます。

難易度が標準レベルと難問レベルに分類される大問が出題されますが、いずれも考察力を必要とされ、ここが教科書の例題と異なるところです。

また、大問4つというのは他の旧帝国大学と比べて少なく、1つの大問に平均すると37.5分かけられます。名古屋大理系数学は2007年度までは大問4つで120分という試験形式でしたが、その後はずっと大問4つで150分の試験時間となっています。

これは、一問をじっくり考えさせたいという意図が窺えます。しばしば分野融合問題が出題されますが、大問数を絞った結果、数学ⅠA からⅢCまでの力を問おうとすると、融合問題にならざるを得ない事情があるのでしょう。

直近5カ年の出題を見ると、数Ⅲ微積分が絡んだ問題が大問の半数を占めており頻出となっています次いで、複素数平面、確率からの出題が頻出です。その他は、あえて満遍なく単元を散らしての出題をしていると思います。たとえば、空間ベクトルが2024年に5年ぶりに大問3として登場しました。

各大問は小問に分割され、大問内の小問(1)においては基本を問う出題がなされます。しかし、どの大問においても小問(2)以降は見てすぐに方針が立つ小問は少なく、教科書の例題や青チャートの「基本例題」で見かけるような出題はありません。

近年は、大問1が比較的やさしい出題で大問4に難問が配置されていますが、この傾向は2025年も続くでしょう。

名古屋大学の理系数学では”考察力”を要求される問題が出題される

名古屋大学の理系数学では「考察力」を求められる問題が多く出題されています。ここでの「考察力」とは各小問どうしの繋がりを発見したり、問題の言い換えをするなどして解法の糸口を発見したりする力のことを指します。

具体例として下の2024年の大問2が参考となるでしょう。分野としては、複素数平面からの出題ですが、因数定理や共通解の知識と手法も問われる分野融合問題です。

小問(1)の問い方が教科書の例題と異なることに気付くと思います。こういう出題にすることにより単に例題とその解法を覚えてきた受験生をふるいにかけようとしているのでしょう。

小問(2)では、単に因数定理を使って解く問題ではないことに気付くはずです。αの極形式を求めてみるとか、小問(1)との繋がりはないかなど想像して解法を練り上げることにより、ようやく答案が作成できます。小問(3)も同じく前問までとの繋がりを考察することにより答案が作成できます。

このように、名古屋大学の入試数学においては、教科書のいくつかの単元を単に融合した出題ではなく、「考察力」を要するような出題となっています。

他にも数Ⅲの微積分からの出題では、下の19年の大問1のような問題もあります。

青チャートの重要例題で取り上げられている定積分の漸化式の知識・手法を前提としてその上で「考察力」を測ろうとしている問題です。名古屋大学側はある程度の知識・経験を前提とした上での「考察力」を測ろうとしていることが伺えます。

受験生の夏以降にやっておきたいこと

それはズバリ、受験で必要な考察力を身につけることです。まず、考察力をもう少し具体的に定義すると、「数値実験」や「小問どうしの繋がりの分析」をした上で、定石の解法に落とし込む力のことです。

そのため、そもそもの基本の理解ができていて、定石となる解法がインプットされていなければ、考察力を養うことはできません。これを踏まえて、「考察力」を要する大問をどのような手順で解けるようになるかについて説明していきます。

手順1:「基本の理解」をもう一度確認する

「基本の理解」とは、教科書の例題が確実に解けて用語や定理を理解していることを指します。「基本の理解」は軽視されがちではありますが、絶対に外せないところです。たとえば、下の24年の大問1をご覧ください。

小問(1), (2)はまさに「基本の理解」を問う出題であり、小問(3)から「考察力」を要するような出題となっています。毎年、1つか2つの小問で教科書の例題レベルのものが出題されます。こういった問題で確実に正解しないと合格点を取ることは不可能です

次に、なぜ教科書の用語・定理を確認しておきたいかと言うと、近年、「連続関数」「中間値の定理」「平均値の定理」と言った数Ⅲ微積分の基礎の理解を要する出題がなされているからです。下の22年の大問4が参考になります。

具体的な関数ではなく、抽象的な関数を扱った問題であって、小問(1)ですら完答できない受験生が居たであろうと推測します。小問(2)においては存在を示すために中間値の定理を使いますが、問題文に「中間値の定理を使って示せ」と書かれておらず、その方針の発見を求められています。

この大問では差が付かなかったのかもしれませんが、数ⅠAからⅢCまでの教科書の用語や定理を正確に使いこなせるようにしておきたいところです。

手順2: 青チャートは「重要例題」までを得点できるレベルまで仕上げる

青チャートの「重要例題」までは得点できるレベルまで演習しましょう。

青チャート

青チャートは基本例題、重要例題、演習例題の3つのレベルがあります。そのうち、重要例題までを得点できるレベルまで昇華させてほしいのです。青チャートは受験生の夏までにある程度やっている人は多いと思います。しかし、青チャートの基本例題・重要例題をランダムに出されてパッと解ける自信がある人は少ないのではないでしょうか

「得点できる」とは、ただ解けるだけではなく、問題の方針がすぐに思いついて素早く正確に解ける状態のことを指します。その状態まで仕上げないと、名古屋大学の入試問題は解けるようになりません。先に述べた2019年の大問1のように、青チャートの重要例題をさらに発展させた出題で「考察力」を測ろうとする傾向が見られます。

また、数Bの青チャートの「重要例題」には、名古屋大学で頻出である確率漸化式が数題取り上げられています。そのため、「重要例題」の理解は名古屋大学理系数学を攻略するための基礎となると言えるでしょう。そのため、基本例題はもちろんのこと、重要例題までを「得点できる」レベルまで仕上げることが合格への必要条件となるのです。

さらに重要例題を得点できる状態までもっていったら、余裕があれば青チャートの「演習例題」も同様に仕上げましょう。

青チャートの使い方について詳細を知りたい方はこちらの記事を参照ください。
関連記事>>偏差値を爆上げ!する青チャートの勉強法やいつまでにやるべきかを解説

手順3:「考察力」を問う大問をまず50題解いてみる

「考察力」を要する大問の攻略のための知識・手法が身についてきたら、演習の段階に入る時期です。数学で志望学部の合格者平均点を超えるには「考察力」を問う大問で部分点でもいいので点数を稼がねばなりません

完答を目指す対策というのはさすがに厳しいので、まずは「考察力」が求められる大問を50題ほど解いてみましょう。名古屋大学の入試問題のレベルに一番近いのは、九州大学・東北大学の前期試験過去5カ年だと私は思います。

九州大学(理系-前期日程) (2025年版大学赤本シリーズ) 

東北大学(理系) (2025年版大学赤本シリーズ)

解いていく過程で、「小問どうしのつながりを分析する」とか「数値実験や問題の言い換えなどをして解法の糸口を発見する」といった文言が何を意味しているのかが分かってくると思います。

また、教科書や青チャートで学んだ「基本」に肉付けしていく形で、発見や発想が進んでいくことに気付くと思うのです。これで大問数で言うと50題になります。融合問題は高度なので少しレベルを落として単元別になった問題を解きたいのであれば、「数学 重要問題集」や青チャートの最後のほうに載っている「総合演習」がいいでしょう。

2025 実戦 数学重要問題集 数学I・II・III・A・B・C(理系)

手順4:数ⅢCの重点対策をする

出題の半数が数学ⅢCとなることを考えると、数学ⅢCだけ重点的に対策してみるのが得策でしょう。これまでの出題を見る限り、数学ⅢC範囲の大問のほうが、前提となる知識・経験を多く求める出題となっていますので、事前準備をすることが効果的です。そこで、青チャートの微分法と積分法の単元、複素数平面の単元の「重要例題」「演習例題」「EXERCISES」を解いてみましょう

解くとすぐに気付くのが、青チャート内の重量級の問題は名古屋大学理系数学のやや難から難の大問に相当するということです。しかし、来年の入試でこの難易度の大問が出されたら、完答できるかというとそうではないでしょう。

たとえば、上に挙げた22年大問4が難問に分類される大問ですが、「重要例題」「演習例題」「EXERCISES」をもう一度解いたくらいでは完答を目指すのは難しいことに気付くと思うのです。そこで、部分点を稼ぐという姿勢を取ることになります。実は、この段階まで進んで初めて、名古屋大学理系数学の難易度を実感できたこととなるのです。

さて、22年大問4くらいの難易度の問題を解いて数学で点数を稼ぎたいと考えている人は、別の問題集に挑むことになります(そこまで考えていない人はやらなくてもいい)

たとえば、赤チャートの「総合演習」だけを解くというのもいいでしょう。その際に、むしろ青チャートや数学重要問題集の編集から外れているような問題がメインになっていることに気付くと思うのです。新数学演習(東京出版)に挑むのもいいでしょう。余裕があれば、別の問題集に挑むことで、結果として、部分点を稼ぐことに繋がる可能性があります。

赤チャート

新数学演習 2024年 09 月号 [雑誌]: 大学への数学 増刊

まとめ

数学で志望学部の合格者平均点を少し超えるくらいを目標にしているということは、他の英語や理科においては合格者平均点を確保できるように対策を進めていかねばなりません。名古屋大学は志望学科によっては、共通テストの配点の割合が高いので、共通テスト対策も気を抜けません。

限られた時間での対策となりますので、10月までに手順2まで到達しておかないと間に合いません。余裕がある人以外は、要するにバランスが大事になるのです。「考察力」が問われる大問は、教科書や教科書傍用問題集などでは扱われることはなく、名古屋大学の過去問を解いてはじめて出会うものです。

過去問を解いてみたもののなかなか解けなくどうしようと躓いてからが本当の受験生の姿のように思います。是非、手順4までを実行して欲しいです。

理系のための大学受験塾SoRaでは難関大の数学を突破することに特化した「数学【カラ破り】コース」を開講しています。

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この記事を書いた人

百瀬 浩市のアバター 百瀬 浩市 理系のための大学受験塾SoRa 代表/塾長

埼玉県立所沢高校を卒業。現役で東京農工大学工学部に入学。(その他、東京理科大学理学部、明治大学理工学部、芝浦工業大学工学部、東洋大学理工学部にも合格)
大学在学中に大手予備校にて指導経験を積む。大学卒業後、地元の個別指導塾にて教室長を務めたのち、理系のための大学受験塾SoRaを立ち上げて現在に至る。

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